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防災ハザードマップ制作6つのポイント(日本語版/外国語版)-掲載情報の選び方や地名翻訳、外国語レイアウトまで解説-

近年、大型台風の襲来や集中豪雨など日本列島に甚大な被害をもたらしている自然災害。これら水害をはじめとした防災対策は地域住民の安全を守る上で、行政機関にとっての重要な検討事項となっています。

今回は、防災情報を発信するために自治体に発行が義務づけられている防災ハザードマップ制作におけるポイントと、外国人居住者に向けた外国語版ハザードマップを発行する上での翻訳・レイアウト上のポイントについて解説をします。

 

1.「防災ハザードマップ」とは

 

ハザードマップ(防災情報マップ、災害避難地図などともいう)とは、一般的には自然災害による被害を予測し、その被害の範囲を地図化したものです。日本の水防法では、主要河川・海岸を管理する国や都道府県に浸水想定区域(洪水・雨水出水・高潮)の指定を求めていて、浸水想定区域がある市町村など自治体に対しては水害ハザードマップ作成を義務づけています。

これらのハザードマップは、災害時の避難や防災学習、さらには土地利用の検討など幅広い活用がなされています。

 

ハザードマップには、想定される災害リスクを網羅した総合型ハザードマップと、特定の災害リスクに焦点を当てて作成したテーマ別ハザードマップ(例:水害ハザードマップ)の2種類があります。自治体はそれぞれの地域における災害リスクや財政状況を加味して、どちらの形式を採用するか選択し作成します。

 

2.全国で見なおしがすすむ「防災ハザードマップ」

 

近年の気候変動の影響により雨の降り方の激しさが増しており、河川が氾濫危険水位を超過し大規模な水害を引き起こすケースが相次いでいます。わが国では2015年に水防法を改正し、浸水想定区域の前提となる降雨の想定規模を従来の「100~150年に1度程度」から「千年に1度程度」の「想定しうる最大規模の降雨」と改めました。

主要河川を管理する国や都道府県は、これらの想定から浸水想定区域を見なおしが図られ、現在、その根拠に基づいて地方自治体により水害ハザードマップの改訂が進められています。

 

3.高まる外国人居住者向けの防災コンテンツ発信需要

 

また、外国人居住者に対する防災情報の提供も、自治体にとって検討すべきテーマとなっています。日本で働く外国人労働者や、日本に留学に来ている外国人留学生に対しても、居住する地域の災害リスクやその対応について適切に伝える必要があります。

日本語の習熟度についても考慮をし、居住する人の国籍や母国語に合わせた独自の外国語版ハザードマップを発行する自治体も増えてきています。特に近年では、ベトナム人やフィリピン人をはじめとした東南アジア系言語や、ブラジル人のポルトガル語、その他南米地域でのスペイン語などの需要も高まってきています。

 

4.防災ハザードマップ制作のポイント(外国語版への展開も含めて解説)

 

① 防災ハザードマップに掲載する情報を検討する

内閣府の「防災情報のページ」では、防災ハザードマップを作成するにあたり注意すべきポイントを、地震・津波災害、火山災害、風水害、林野火災などテーマ別に紹介しています。提供すべき地図情報や防災における啓発のポイントがまとめられており、防災ハザードマップのコンテンツを検討する上で参考になります。

 

近年の水害対策にテーマを合わせたハザードマップの場合、国土交通省の提供する「水害ハザードマップ作成の手引き」「洪水ハザードマップ作成の手引き(改定版)」「洪水ハザードマップ作成事例集」などを参考にすると良いでしょう。

 

洪水ハザードマップへの記載事項の一覧(洪水ハザードマップ作成の手引きより)

共通項目(必ず記載)
  • 浸水想定区域と浸水深
  • 洪水時家屋倒壊危険ゾーン
  • 避難所等
  • 避難時の危険箇所
  • 土砂災害警戒区域
  • 水位観測所等の位置
  • 浸水ランク等に即した避難行動の心得
  • 洪水予報等、避難情報の伝達方法(プッシュ型情報)
  • 洪水時に得られる情報とその受信や取得方法(プル型情報)
  • 避難所等の一覧
  • 津波災害警戒区域に関する事項
  • その他
    地域項目(自治体が判断して記載)

    ① 避難活用情報

    • 河川の氾濫特性
    • 避難時の心得
    • 避難勧告等に関する事項
    • 地下街等に関する情報 等

    ② 災害学習情報

    • 水害の発生メカニズム、地形と氾濫形態
    • 既往洪水に関する情報
    • 洪水氾濫時に起こること及び避難の際に注意すべきこと
    • 水害に備えた心構え
    • 気象情報に関する事項
    • その他 等
    参考:洪水ハザードマップ作成の手引き(改定版)(国土交通省)

     

    ② 避難計画に基づいた避難情報の掲載

    防災ハザードマップのコンテンツでは、被害が想定されるエリアや危険箇所の特定に加え、災害が発生した時の避難情報についても掲載が望まれます。これらは通常、自治体の定める災害時の避難計画に基づき検討がなされます。「要避難区域(避難の必要な区域)」、「避難ルート」、「避難場所」、「避難時危険箇所」、「避難情報等の伝達方法」など、居住者が実際に避難することを想定して、必要な情報について検討を行っていきます。

    避難所情報については、水害時の浸水状況なども考慮して何階以上を避難場所として指定しているか明示する必要があります。また、避難所については建物・施設の具体的な収容人数についても記載していると親切でしょう。

     

    ③ 防災ハザードマップのデザイン上の工夫

    防災ハザードマップは、分かりやすさが大切であり、誰もが一目で情報を理解できるように工夫する必要があります。年齢や国籍を問わず、誰でも内容がつかめるようにするためには、文字や文章で長々と説明するのではなく、イラスト、写真、図版を効果的に用いて直感的に内容がつかめる構成にすると良いでしょう。

     

    ④ 外国語版 防災ハザードマップの発行にむけて(地名・固有名詞編)

    マップ・地図情報の翻訳で注意すべきポイントは、地名や建物名などの固有名詞の翻訳です。同じ単語でも異なる読み仮名になるケースも多く、入念な調査が必要になります。

    例えば、「大井町」という単語の翻訳の場合、神奈川県中郡では「おおいまち」が正しく、福井県大飯郡では「おおいちょう」が正しい読み仮名となります。ネイティブ翻訳者にお願いすると、自分の知っている音に翻訳しがちで、後々になって誤りが指摘されることがよくあります。手間はかかりますが、それぞれの読み仮名を調べて、翻訳に反映していく地道な作業が欠かせません。

     

    ⑤ 外国語版 防災ハザードマップの発行にむけて(地図表記編)

    地図における表記ルールについては、国土地理院の提供する「多言語表記の地図」ページの提供する情報が参考になります。ここでは、英語による表記規則をはじめ、中国語簡体字、中国語繁体字、韓国語、フランス語など英語以外の言語における地図上での表記規則についての情報が提供されています。

    地形を表す英語及び英語の配置位置

    漢字英語配置位置
    山、岳、嶽Mt.先頭(Mt. ○○)
    River末尾(○○ River)
    Lake先頭(Lake ○○)
    Cape先頭(Cape ○○)
    Pass末尾(○○ Pass)
    海岸、浜Beach末尾(○○ Beach)
    参考:地名等の英語表記規程(国土地理院)

     

    ⑥ 外国語版 防災ハザードマップの発行にむけて(レイアウト編)

    一般的に、英語・欧州言語などのラテン文字の場合、日本語に比べてテキスト量が2~3割程度増加する傾向にあります。そのため外国語版の防災ハザードマップを発行することが決まっている場合には、あらかじめ日本語版のレイアウト段階でテキストの分量を少なめに構成し、スペースに若干の余裕を持たせておくと良いでしょう。

    こうしたことが意識されずに、情報をぎっしり詰めこんだもので日本語版を作成してしまうと、いざ外国語版のレイアウトをするとき、文字が収まりきらなくなってしまいます。文字サイズや文字間隔を極端に小さい可読性の損なわれたものにならないよう、日本語版の制作段階から外国語版の仕上がりをイメージしてレイアウトすることが重要です。

    また、日本語で一般的に使用される「縦書き」表記は他の言語では一般的ではないため、外国語版の制作を前提とする防災ハザードマップでは、日本語版のレイアウトでも「縦書き」は使用しないよう注意しましょう。

     

    まとめ

    • ハザードマップとは自然災害による被害を予測し、その被害の範囲や避難場所を地図化したもの
    • 水防法改正により浸水想定区域が見なおされ、自治体発行のハザードマップの改訂が進められている
    • 防災コンテンツの検討には、国が提供する手引きや事例を参考にするとよい
    • 外国語版の防災ハザードマップ作成には地名翻訳や外国語レイアウトなど注意すべきポイントがある

     

     



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